公園のすみ、家の庭、道路のわきの割れ目。どこにでも、アリはいます。あの小さな一匹が、地球の上にぜんぶで何匹いるのか、考えてみたことはありますか。
科学者たちが世界中の記録を集めて計算したところ、その数はおよそ2京(けい)匹。
一匹一匹はほんのわずかな重さなのに、ぜんぶ集めた重さは、地球にいる野生の鳥とけものを合わせたよりも重い――この記事では、そのおどろきの数と重さを見ていきます。
地球のアリは、何匹いるの?
答えは、約2京匹です。2京とは、ふだん使う「兆(ちょう)」でいうと、2万兆。数字で書くと、20,000,000,000,000,000匹。2のうしろに0が16こもつく、とてつもない大きさです。
人間の数とくらべると、もっと実感がわきます。地球の人口は約80億人。アリの数をこの人数で割ると、一人あたり約250万匹。あなた一人の分だけで、250万匹のアリがいる計算です。

どうやって、そんな数を数えたの?
もちろん、一匹ずつ数えたわけではありません。研究者たちは、世界中のいろいろな場所で行われた489もの調査を集めました。地面を歩くアリ、木の上でくらすアリ――さまざまな環境の記録をつなぎ合わせて、地球全体の数を見積もったのです。
しかも、この2京匹は「少なめに見た」数だと研究者は言います。土の奥深くにいるアリや、まだ十分に調べられていない地域があるからです。本当の数は、これよりもっと多いのかもしれません。
ぜんぶ集めたら、何の重さになる?
次は、重さです。世界中のアリをぜんぶ集めると、その重さは約1200万トンになります(体の水分をのぞいた、乾いた重さを炭素ではかった場合)。
この重さがどれくらいかというと――地球にいる野生の鳥ぜんぶと、野生のけものぜんぶを合わせたよりも重いのです。スズメもワシも、シカもゾウも、野生のものをぜんぶ足しても、アリの合計にはかなわない。小さな体の集まりが、それだけの重さになります。
「アリをぜんぶ集めると、人類と同じ重さになる」という話を聞いたことがあるかもしれません。じつはこれは、昔の見積もりから広まった話です。
より新しく、ていねいに数え直した計算では、アリの重さは人類の約5分の1ほどでした。それでも鳥やけものより重いのですから、やはりおどろきの量です。

なぜ、そんなに多いの?
アリがこれほど多いのは、まず「集団でくらす」生きものだからです。一つの巣(コロニー)に、何百から、種類によっては何百万匹ものアリがまとまってくらします。その巣が、地球のほぼどこにでもある。あつい砂漠から、しめった森まで、アリは1万5千種以上に分かれて、いろいろな場所に合わせてくらしています。
では、なぜアリはここまで栄えることができたのか。その進化の物語は、また別の記事でたどります。ここでは「数がとても多い」という事実を、もう一歩深く見てみましょう。
「生物量(バイオマス)」というものさし
ここからは、中学生や大人にも向けた、もう一段深い話です。
一匹の大きさだけを見ると、アリはちっぽけな虫です。けれど「ある生きものを地球ぜんぶ集めたら、合計でどれくらいの重さになるか」というものさしで見ると、まったくちがう姿が見えてきます。この「合計の重さ」を、生物量(せいぶつりょう)、またはバイオマスと呼びます。
生物量で見ると、アリは地球の生きものの中で、とても大きな存在です。そして、ただ重いだけではありません。アリは土をほって空気や水の通り道をつくり、植物の種を運び、ほかの虫を食べて数を調整します。
小さな一匹の行動が、2京匹分集まることで、地球の自然のしくみそのものを動かしているのです。昆虫はよく「世界を動かす小さな者たち」と呼ばれますが、アリはその代表と言えます。
数の少ない大きな動物だけでなく、数の多い小さな生きものにも目を向ける。それが、生物量という見方のおもしろさです。
横断リンク:数の力を、どう実感する?
「一匹は小さくても、数が集まれば地球規模の量になる」。これは、アリだけの話ではありません。同じ見方で、ほかの生きものともつながります。
オキアミ
オキアミは、南極などの海にすむ、数センチの小さな生きものです。一匹はエビを小さくしたような姿。けれど、南極の海にいるオキアミをぜんぶ集めると、その重さはおよそ3億8千万トンにもなり、野生の動物の中でも最大級の生物量になります。
クジラやペンギン、アザラシの食べ物を、この小さな生きものたちが支えているのです。重さの面から見た、数の力の代表です。
線虫(せんちゅう)
線虫は、土の中にすむ、細くて小さな生きものです。目でやっと見えるかどうかの大きさですが、数でいえば地球でいちばん多い動物とされています。土の表面にいるだけで、その数は一人あたり約570億匹。
地球の動物を5匹集めると、そのうち4匹は線虫だ、という研究もあるほどです。小ささでは負けても、数では、どんな生きものもかないません。
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ことばの説明
- 生物量(せいぶつりょう)/バイオマス……ある生きものを、地球やある場所でぜんぶ集めたときの、重さの合計。一匹の大きさではなく、全体の量で生きものを見る考え方。
- コロニー……女王アリや働きアリなどが、一つの巣でまとまってくらす集団。
- 炭素(たんそ)……生きものの体をつくる、もとになる成分の一つ。生物量は、この炭素の重さでくらべることが多い。
- オキアミ……南極などの海にすむ、数センチの小さな生きもの。ぜんぶ集めた重さは、動物の中でも最大級。
- 線虫(せんちゅう)……土や水の中にすむ、細くて小さな生きもの。数でいえば、地球でいちばん多い動物とされる。
まとめ
アリは、一匹一匹はとても小さく、軽い生きものです。それでも地球には約2京匹――一人あたり250万匹ものアリがいて、ぜんぶ集めた重さは、野生の鳥とけものを合わせたよりも重い。
一匹の小ささではなく、みんなを合わせた「生物量」で見ると、アリが地球でどれほど大きな存在かが見えてきます。
そして、この「小さな者が数で地球を支える」という姿は、海のオキアミにも、土の中の線虫にも共通していました。小さな生きものほど、数の力で、地球のしくみを静かに動かしている。
アリの数と重さは、その事実を教えてくれる、身近な入口だったのです。