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アリはどうやって食べ物を分け合う?口移しのおすそ分けのしくみ

砂糖のかけらやお菓子のくずに、アリが集まっているのを見たことはありませんか。よく見ると、食べ物を見つけたアリが、すぐそばで別のアリと口をくっつけ、向かい合っていることがあります。

あれは、けんかでも、あいさつでもありません。口から口へ、食べ物を分けわたしている場面です。

アリは、見つけた食べ物をひとりじめしません。口の中にためて巣に持ち帰り、おなかをすかせた仲間や、外に出られない女王や幼虫(ようちゅう)へ、口移し(くちうつし)で分けていきます。

あたたかい「おすそ分け」のように見えますが、そのしくみをのぞくと、じつは巣じゅうに栄養をいきわたらせる、みごとな配りかたが見えてきます。この記事では、その口移しのしくみを見ていきます。

目次

「口移し」って、なにをしているの?

アリの巣には、食べ物を集めてくる係の働きアリ――採食係(さいしょくがかり)がいます。この採食係は、外で見つけた甘い汁や小さな虫などを、まず自分の口の中に取りこみます。

ただし、そのまま全部を消化してしまうわけではありません。多くは、消化しないまま、体の中の袋にためておきます。

そして巣にもどると、おなかをすかせた仲間と向かい合い、口から口へ、ためておいた食べ物を吐き戻して(はきもどして)わたします。これが口移しです。もらう側のアリは、触角(しょっかく)や前あしで相手の頭を軽くたたき、「ちょうだい」と伝えます。

おなかがすいているほど、たたきかたは熱心になります。

口移しの相手は、大人の働きアリだけではありません。巣の中で育つ幼虫や、卵を産みつづける女王アリにも、こうして栄養がとどけられます。

外に出て食べ物を探せない仲間も、口移しのおかげで、ちゃんと食べていけるのです。

なぜ、わざわざ口移しで分けるの?

アリの巣は、みんなが同じ仕事をしているわけではありません。外へ食べ物を探しに行く係、巣の中で幼虫の世話をする係、卵を産む女王――役割が分かれています。

ということは、巣の中で働く多くのアリや、女王、幼虫は、自分では食べ物を探しに行きません。だれかが外から運んできて、分けてくれなければ、食べられないのです。

そこで役に立つのが、口移しです。外で食べ物を見つけた採食係が、それを口移しで次のアリへ、そのアリがまた次のアリへ……とわたしていくと、一匹が見つけた食べ物が、つぎつぎに巣じゅうへ広がっていきます。

一匹一匹は、ただ「おなかをすかせた仲間に分ける」というかんたんなことをしているだけ。それが積み重なって、巣ぜんたいに栄養がいきわたるのです。

ここで、ひとつの疑問がわきます。口の中の食べ物を分けてしまったら、自分の食事はどうなるのでしょう。じつはアリの体には、うまいしくみがあります。

分ける用の袋と、自分用の胃

多くのアリは、食べ物をためておくための袋、そのう(素嚢=そのう)を持っています。口から入った食べ物は、まずこのそのうに入ります。そのうの中身は、まだ消化されていません。だから、仲間に吐き戻して分けることができるのです。

そのうのおくには、自分の体のための消化用の胃がつながっていて、そのあいだには関所(せきしょ)のような弁(べん)があります。

自分が使う分だけを弁の向こうへ送り、残りはそのうにためて、仲間に分ける。こうしてアリは、みんなに配る食べ物と、自分が消化する食べ物とを、体の中で分けているのです。

栄養交換(えいようこうかん)と社会的胃(しゃかいてきい)

ここからは、中学生や大人にも向けた、もう一段くわしい話です。

アリが口移しで食べ物を分け合うこの行動を、栄養交換(えいようこうかん)と呼びます(トロファラキシスともいいます)。そして、そのために使われるそのうは、自分のためというより、巣のみんなのための胃だといえます。

そこで研究者たちは、この袋を社会的胃(しゃかいてきい=社会のための胃)と呼びます。ふつうの胃が「自分の体のための胃」なら、そのうは「仲間のための胃」。アリは、はたらきのちがう胃を二つ持っているようなものなのです。

こう見てくると、口移しは、心のこもった「おすそ分け」というより、巣ぜんたいに栄養を配るための、よくできた運びかたなのだと分かります。あたたかい行動に見えたものの正体は、コロニー(一つの巣の集団)を一つの体のように働かせる、栄養の配りかただったのです。

さらに近ごろの研究では、口移しでやりとりされる液には、食べ物だけでなく、アリが体の中でつくったタンパク質やホルモンのような物質もまじっていることが分かってきました。

つまり口移しは、栄養を配るだけでなく、体の調子や役割にかかわる物質を仲間に手わたす通り道にもなっているらしいのです。ここは今、研究が進んでいるところで、くわしいことはまだ調べられている最中です。

食べ物を、口から分け合うのは?

「口から口へ、食べ物を分け合う」。これは、アリだけの話ではありません。同じやりかたで栄養を分ける生きものが、ほかにもいます。

チスイコウモリ(哺乳類)

チスイコウモリは、ほかの動物の血を吸って生きる、小さなコウモリです。体が小さいわりにたくさんのエネルギーを使うため、二晩(ふたばん)つづけて血を飲めないと、命を落とすことがあります。

そこでこのコウモリは、その日うまく血を飲めなかった仲間に、おなかいっぱいの個体が、飲みこんだ血を吐き戻して分け与えます。分けてもらった相手は、それをおぼえていて、こんどはその相手が困ったときに分け返すことも確かめられています。

こうした分け合いが、群れ全体で、飢え(うえ)に対する保険のようにはたらくのです。血のつながった相手だけでなく、そうでない仲間とも分け合うことが知られています。口を通じて食べ物を分けるという点は、アリの口移しとよく似ています。

ハト・フラミンゴ(鳥)

ふつうの鳥は、親がつかまえてきた虫や魚を、そのままひなの口に入れて育てます。ところがハトやフラミンゴ、コウテイペンギンのなかまは、ちがう方法をとります。

親が、そのう(アリと同じ名前の、食べ物をためる袋)でつくった栄養たっぷりの液を、口移しでひなに与えるのです。この液はそのう乳(そのうにゅう)と呼ばれ、ハトのものは「ピジョンミルク」として知られています。

おもしろいことに、このそのう乳は、メスだけでなくオスもつくることができます。アリと同じ「そのう」という袋が、ここでは食べ物を分け与えるために役立っているのです。

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この記事を書いた人

小学校高学年の子どもたちにも読めるように、身近な科学のふしぎをやさしく整理しています。

記事では、ただ驚くだけで終わらず、「なぜそうなるのか」という仕組みまで伝えることを大切にしています。家庭や学校でも安心して読める科学サイトを目指しています。

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