庭のすみや公園で見かける、小さくて黒いアリ。いっぽう、ニュースで「家の柱を食べる」と聞く、白っぽいシロアリ。どちらも名前に「アリ」とついていて、小さな虫という見た目もそっくりです。きっと近い仲間なのだろう――そう思っていませんか。
ところが、生きものの分類でいうと、シロアリはアリの仲間ではありません。それどころか、ハチやゴキブリまで入れて家系図をかいてみると、シロアリはアリから、ずいぶん遠いところにいます。
この記事では、シロアリは本当は何の仲間なのか、アリは何の仲間なのかを、生きものの家系図(系統)をたどって見ていきます。
シロアリは、何の仲間なの?
名前に「アリ」とついていても、シロアリはアリとはべつのグループの生きものです。まずは、アリとシロアリが、それぞれどんな仲間に入るのかを見てみましょう。
アリは、ハチに近い仲間
ふだん見かけるアリは、家系図でたどるとハチのなかまに入ります。胸とおなかのあいだがきゅっとくびれているのは、ハチの仲間によく見られる特ちょうです。季節になると羽アリになって飛び立つ姿を思い出すと、ハチに近いというのも、少し納得できるかもしれません。
アリは、いわば「地面でくらすようになったハチのなかま」なのです。
シロアリは、ゴキブリに近い仲間
いっぽうのシロアリは、家系図でたどるとゴキブリのなかまに、とても近い生きものです。見た目はアリそっくりでも、その正体は、アリよりもゴキブリのほうに、ずっと近いのです。
昔は、シロアリだけで独立したグループに分けられていましたが、くわしく調べるうちに、ゴキブリの仲間の中に入れるのが正しいと分かってきました。

なぜ、見た目が似ているのに「べつの仲間」なの?
名前も見た目も似ているのに、アリとシロアリはなぜべつの仲間に分けられるのでしょうか。その答えは、生きものを「何で」分けているか、にあります。
分類は、見た目ではなく「家系図」で決める
生きものをグループ分けすることを、分類(ぶんるい)といいます。分類でいちばん大事なのは、見た目がどれだけ似ているかではなく、どの祖先(そせん)から枝分かれしてきたか、という家系図です。
科学者は、体のつくりや育ち方、さらに今では体の中の遺伝子(いでんし/DNA)まで調べて、どの生きものとどの生きものが近い枝にいるのかをたどります。すると、見た目がそっくりなアリとシロアリが、じつは遠くはなれた枝にいることが分かってきました。見た目は、分類の答えそのものではないのです。
似てしまうのには、わけがある
では、遠い仲間なのに、なぜここまで似てしまったのでしょう。どちらも「小さな体でたくさん集まって巣をつくり、季節になると羽アリを飛ばす」という、よく似た暮らし方をしているからです。遠いグループの生きものでも、似た暮らしに合わせて、それぞれ別べつに似た姿を身につけることがあります。これを収れん(しゅうれん)と呼びます。似ているからといって、近い仲間とはかぎらないのです。

それぞれの「本当の家族」
ここからは、中学生や大人にも向けた、もう一段くわしい話です。
アリは、ハチ目(はちもく/膜翅目・まくしもく)という大きなグループに入ります。ミツバチやスズメバチと同じ仲間で、アリはその中で、羽を持たない働きアリが地面で社会をつくるように進化したなかまです。
シロアリは、長いあいだ「等翅目(とうしもく)」という独立したグループに置かれてきました。けれど、体のつくりや遺伝子を調べた研究から、今ではゴキブリ目(ゴキブリのなかまのグループ)の中に入れられています。とくに近いのは、朽木(くちき)を食べる一部のゴキブリです。
シロアリも、そうしたゴキブリも、木を食べたあと、腸(ちょう)の中にすむ小さな生きもの(微生物・びせいぶつ)の助けをかりて消化します。この「木を食べるしくみ」が似ていることも、両者が近い仲間だと分かる手がかりのひとつです。
おもしろいのは、アリのなかま(ハチ目)と、シロアリのなかま(ゴキブリ目)が、まったくべつの祖先から、それぞれ別べつに「たくさんで集まって社会をつくる」という暮らしにたどり着いたことです。
社会をつくるという同じゴールに、遠い二つのグループが別の道から行き着いた――これも、収れんの大きな例といえます。
見た目が似た生きものは、なぜ違う?
「見た目はそっくりなのに、家系図ではべつの仲間」。これは、アリとシロアリだけの話ではありません。同じ問いで、ほかの生きものともつながります。
クジラと魚(さかな)
クジラは、海をすいすい泳ぎ、ひれを持ち、形も魚にそっくりです。けれどクジラは魚ではなく、わたしたちと同じほ乳類(ほにゅうるい)。肺(はい)で息をし、子を乳(ちち)で育てます。家系図でいえば、クジラは魚よりも、ウシやヒトのほうにずっと近い仲間です。
モグラとケラ
土の中をほって進むモグラと、虫のケラ。どちらも、土をかくのにぴったりな、シャベルのような前足を持っています。けれどモグラはほ乳類、ケラは昆虫(こんちゅう)。遠い仲間どうしが、「土をほる」という同じ暮らしに合わせて、よく似た前足を身につけました。
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ことばの説明
- シロアリ……名前はアリに似ていますが、アリとはべつのグループ。ゴキブリに近い仲間で、木材を食べて巣をつくり、家の木をいためることがあります。
- 分類(ぶんるい)……生きものを、どの祖先から枝分かれしてきたかをもとに、グループに分けること。
- 系統(けいとう)……生きものがたどってきた、枝分かれの道すじ。家系図のようなもの。
- ハチ目(はちもく)……ハチ・ミツバチ・アリなどが入る大きなグループ。膜翅目(まくしもく)ともいいます。
- ゴキブリ目(もく)……ゴキブリやシロアリが入るグループ。
- 収れん(しゅうれん)……遠いグループの生きものが、よく似た暮らしに合わせて、それぞれ別べつに似た姿やしくみを身につけること。
まとめ
シロアリは、名前に「アリ」とついていても、アリの仲間ではなかったのです。アリはハチに近い仲間、シロアリはゴキブリに近い仲間で、家系図ではずいぶん遠くはなれています。
それなのに姿がそっくりなのは、よく似た暮らしが、よく似た姿を生んだから。生きものは見た目だけでは決められず、たどってきた家系図をのぞくと、本当の仲間が見えてくるのです。
