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女王アリは何年生きる?昆虫離れした数十年の寿命の話

公園のすみや庭の地面を、小さなアリが列をつくって歩いています。虫の多くは、春から夏に生まれて、その年のうちに一生を終えます。命の長さは、数か月ほどです。

ところが、その行列のずっと奥――巣の中心にいる女王アリは、種類によっては数十年も生きることがあります。同じアリなのに、なぜこんなにちがうのでしょう。

この記事では、女王アリは何年くらい生きるのか、そしてなぜそんなに長生きなのかを見ていきます。

目次

女王アリは、どれくらい生きるの?

ふつうの虫の命が数か月だとすると、女王アリの寿命は、けたちがいです。何十年も生きたという記録が、ちゃんと残っています。

数十年生きた、記録の女王

トビイロケアリ(学名 Lasius niger)という身近なアリでは、ドイツの昆虫学者ヘルマン・アッペルが育てた女王が、28年9か月も生きました。アメリカにすむ収穫アリ(しゅうかくあり)のなかまには、野外で30年ほど生きると考えられている女王もいます。記録的でなくても、多くのアリの女王は、10年以上生きると言われています。

同じ巣でも、寿命はバラバラ

おもしろいのは、同じ巣で生まれたアリどうしでも、寿命が大きくちがうことです。女王アリは10年から数十年。エサを運ぶ働きアリは、数か月から数年ほど。そしてオスは、いちばん短い命です。

巣を出て交尾(こうび)すると、まもなく一生を終えます。

なぜ女王アリは、こんなに長生きなの?

同じ巣の、同じきょうだいなのに、寿命がここまでちがう。その鍵は、体の強さではなく「役割」にあります。

あぶない外の仕事は、しない

働きアリは、外へ出てエサをさがし、巣を直し、ときには敵とたたかいます。外の世界は、天敵や暑さ寒さでいっぱいです。体はすり減り、命を落とすこともあります。いっぽう女王アリは、巣のいちばん奥で働きアリに守られ、エサをもらいながら、卵を産むことに専念します。

あぶない目にあいにくいぶん、長く生きられるのです。

巣は「女王」で増える、ひとつの単位

働きアリは数がとても多く、一匹が命を落としても、数の多さで補えます。だから、一匹一匹が長生きしなくても、巣はちゃんと回ります。けれど女王は、巣のすべての子を産む、たった一つの中心です。女王が元気なあいだだけ、巣は新しい仲間を増やしつづけられます。

だからこそ、女王アリは長く生きるように進化してきました。寿命の長さは、体の強さではなく、巣の中での役割で決まっているのです。

役割が変わると、寿命も変わる

ここからは、中学生や大人にも向けた、もう一段深い話です。じつは、アリの寿命は、生まれたときから完全に決まっているわけではないことが、研究で分かってきました。

インドクワガタアリ(Harpegnathos saltator)というアリでは、女王が死ぬと、残された働きアリどうしが争い、勝った働きアリが女王の役割に「繰り上がる」ことがあります。おどろくのは、女王役になったとたん、その寿命が約7か月から約4年へと、大きくのびることです。役割をやめて働きアリにもどると、寿命も元の短さにもどります。

ふつう生きものには、「たくさん子を産むほど寿命が縮みやすい」という関係(トレードオフ)があります。ところがアリの女王は、たくさん卵を産みながら、長く生きます。

このしくみがどうなっているのかは、今もさかんに研究されているところです。

寿命の違いは、何で決まる?

アリで見えてきた「寿命は役割で決まる」というしくみは、アリだけのものではありません。同じ問いで、ほかの生きものともつながります。

ミツバチの女王と働きバチ

ミツバチも、アリと同じように、女王を中心に役割を分けて暮らす仲間です。女王バチは数年生きますが、夏の働きバチは数週間から数か月ほど。ここでも、寿命を分けているのは「役割」です。

ハダカデバネズミ

アフリカの地下にすむ、ほとんど毛のないネズミです。じつはアリやハチと同じ「真社会性(しんしゃかいせい)」で、子を産むのは女王だけ、ほかはワーカーとして分業します。その女王は30年以上、記録では37歳まで生きた例があり、ワーカーよりずっと長生きです。


哺乳類(ほにゅうるい)なのに、アリと同じ「役割で寿命が決まる」しくみが働いているのです。

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この記事を書いた人

小学校高学年の子どもたちにも読めるように、身近な科学のふしぎをやさしく整理しています。

記事では、ただ驚くだけで終わらず、「なぜそうなるのか」という仕組みまで伝えることを大切にしています。家庭や学校でも安心して読める科学サイトを目指しています。

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